「子どもの声が反響して、保育士同士の会話が聞き取れない」「一日の終わりに喉が痛い」「発達に配慮が必要な子が、音の多さで落ち着かない」——保育園・幼稚園・認定こども園の音環境は、近年ようやく「工事で直せる問題」として注目されるようになりました。

この記事では、報道で示された保育室の騒音の実態、天井吸音の効果、工事を最小限にした後付け吸音の方法と枚数の目安、活用できる補助金の例、導入の手順を、防音・音響の専門店 Bo-On Room が整理します。

前提を1行:吸音は「室内の反響・残響を減らして、うるささと聞き取りにくさを下げる」対策です。隣室や屋外への音漏れは遮音の領域で、吸音材では改善しません。

結論:保育室の「うるささ」の多くは反響です。天井または壁上部に吸音材を設置すると、報道事例では平均5dB程度の低下が確認されています。工事不要の後付け(自立パネル・粘着付きパネル)でも、天井に近い壁上部と対面の壁を優先すれば体感差が出ます。物品購入費を対象にする自治体補助金もあります。

保育室の音はどれくらい大きいのか——報道された実態

東京新聞(2017年2月28日付朝刊・Web版「東京すくすく」2018年9月24日公開)は、保育室内の音量が80デシベル(地下鉄車内並み)、瞬間的には100デシベルを超えることがあると報じています。乳幼児教育学の専門家は、うるさい空間への長時間滞在が子どもの発達にマイナスになり得ると指摘し、建築音響学の研究者は実験で吸音の効果を確認しています(東京すくすく「保育室の騒音」)。

環境省の告示では、住居地域の環境基準は昼間55dB以下です(当店の 業界レポート に出典付きで掲載)。80dBは、その基準を25dB上回る大きさが「日常」になっている状態です。

なぜ保育室は響くのか:床・壁・天井が硬い仕上げで、天井が高く、子どもの声(高い周波数)が壁で何度も跳ね返るためです。人数が多いほど「反響した声の上に、さらに声を重ねる」悪循環(ロンバード効果)が起き、全員が大声になります。吸音材はこの悪循環を切る道具です。

天井吸音の効果——平均5dB低下の事例

同じ報道では、天井にポリエステル繊維の吸音ボードを設置した保育室で、音量が平均5デシベル程度低下したと紹介されています。東京都練馬区の認可保育所(0〜6歳約60人)の事例で、運営会社は2011年度から新設園に導入を続けているとのことです。記事中では「60人規模の保育所で天井の半分を吸音石こうボードにする費用は数万円程度」との記述もあります(同記事より)。

5dBという数字は小さく見えますが、音のエネルギーで約3分の1に相当し、「保育士が声を張らなくても届く」「子どもの声が重ならない」という質的な変化として体感されます。

後付けでできる吸音——工事の大小で3段階

段階 方法 工事 費用感 向く園
①置く 自立式の大型吸音パネルを対面の壁際に 不要 1枚¥55,000〜¥85,000 賃貸物件・まず試したい園
②貼る 粘着付き吸音パネルを壁上部・柱・天井付近に 不要(脚立作業) 1枚¥3,880〜¥6,200×枚数 面積を稼ぎたい園
③天井工事 吸音ボードを天井に施工 必要(業者) 数万円〜(規模・仕様による。報道事例は「数万円程度」) 改修・新設のタイミング

当店で扱えるのは①と②です。③は建築・内装業者の領域で、当店は材料選定の相談に応じます。

①置く:自立式パネル

静科 SDM-1800(1800×900mm・自立・¥85,000) は壁一面に立て掛けるだけで、対面の壁の反射を止めます。4色(ブラック・レッド・ブルー・グレー)があり、保育室の雰囲気に合わせられます。SDM-900(900×900mm・¥55,000) は絵本コーナーや事務机の背面に。

②貼る:粘着付きパネル

静科 E-38(300×600×38mm・320g・¥6,200) はメーカー表記で250Hzの残響を約30%、500Hz以上を50〜80%超低減する厚手タイプ。子どもの声(高め)にはE-15でも効きますが、大人数の反響全体を抑えるにはE-38を壁上部と天井付近に配置するのが効果的です。1枚0.18㎡なので、壁面積の20〜30%(当店推定の目安)を目標に枚数を決めます。

静科 SHIZUKA 吸音パネル(300×600mm・グレー・裏面粘着付き)。保育室の壁上部に貼る後付け吸音材

枚数の目安——50㎡の保育室なら

保育室 壁面積(天井2.7m) まず試す構成 反響を整える目安(20〜30%)
30㎡(約18畳) 約60㎡ SDM-1800×2+E-38 8枚 E-38 67〜100枚相当
50㎡(約30畳) 約76㎡ SDM-1800×2+E-38 16枚 E-38 85〜127枚相当
80㎡(約48畳) 約97㎡ SDM-1800×4+E-38 16枚 E-38 108〜162枚相当

※壁面積は周囲長×天井高の概算。「まず試す構成」で体感し、残響が残る場合に増やす段階導入を推奨します。天井施工(③)を併用する場合は壁の枚数を減らせます。枚数は 必要枚数シミュレーター(「会議室・店舗」を選択)でも計算できます。

貼る位置の優先順位(保育室の場合)

  1. 天井に近い壁上部:子どもの手が届かず、反射の多い面。まずここに帯状に。
  2. 対面する2つの壁:平行な壁の間で音が往復する「フラッターエコー」を切る。
  3. 保育士の定位置の背面:声を張らずに届く。
  4. ピアノ・音楽活動の背面:音量そのものより反響を抑える。

子どもの安全への配慮(必ず確認)

  • 手の届かない高さ(床から1.5m以上)に設置し、引っ張られても落ちない固定(粘着+面ファスナー・ビス下地)にする。
  • 角の処理:自立パネルは転倒防止を確認し、動線に置かない。
  • 難燃性・材質:園の消防計画・内装制限に適合するか、所轄消防署と設計者に確認する。当店取扱パネルの難燃認定については個別にお問い合わせください(メーカー公式ページに等級の記載がないため、当店から確認して回答します)。
  • 清掃:表面が拭ける材(発泡ポリエチレン表面)を選ぶ。

使える補助金・助成の例

保育の音環境改善は、自治体の「保育士の職場環境改善」「施設環境整備」系の補助金で物品購入費として認められる場合があります。代表例を挙げます(制度は年度で変わるため、最新は各自治体に必ずご確認ください)。

制度 対象 対象経費 補助率・上限 備考
令和8年度 横浜市保育士環境改善事業補助金 認可保育所・認定こども園・幼稚園(預かり保育等実施)・小規模保育事業 物品購入費・内装改修費 補助対象経費の3/4・上限250万円 申請は令和8年8月31日まで、事業完了は令和9年3月31日まで(予算上限で早期終了あり)。横浜市公式
他自治体の同種制度 各自治体の保育所等 備品・改修(制度による) 制度による 「保育士 環境改善 補助金」「保育所 施設整備 備品」等で自治体名と検索。園を管轄する保育課へ相談

申請には見積書・仕様書が必要になることが多いため、当店では枚数・設置位置・見積書・製品仕様書をセットでご用意します。→ 法人・施設導入ガイド

導入の手順(当店の標準的な流れ)

  1. 現状の共有:保育室の広さ・天井高・写真・困りごと(会話が聞き取れない/特定の時間帯/特定の子)を お問い合わせ から。
  2. 構成と見積もり:「まず試す構成」と「反響を整える構成」の2案を、枚数・位置図・見積書・仕様書で提示。
  3. 試験設置:自立パネル1〜2枚または壁パネル8枚で1〜2週間試し、保育士の体感(喉・聞き取り)と、可能ならスマホの騒音計アプリで前後を記録。
  4. 本設置:効果が確認できた位置を優先して増設。補助金申請がある場合は交付決定後に発注。
  5. 運用:清掃方法・剥がれ点検の周期をお伝えします。

よくある質問

吸音材を貼ると、外や隣の教室への音漏れも減りますか?

ほとんど減りません。吸音は室内の反響を減らす対策で、音漏れは壁の遮音性能で決まります。室内のうるささ・聞き取りにくさの改善が目的です。

効果はどれくらいですか?

報道された事例では天井吸音で平均5dB程度の低下でした。当店の後付けパネルは設置面積により効果が変わるため、保証値ではなく「まず試す構成」で体感してから増やす段階導入をおすすめしています。

子どもがいたずらして剥がしませんか?

床から1.5m以上の壁上部・天井付近に設置し、粘着に加えて面ファスナーやビス下地で固定します。自立パネルは転倒防止を確認し、動線を避けて置きます。

補助金は使えますか?

自治体の保育士環境改善・施設整備系の補助金で物品購入費が対象になる例があります(横浜市は補助率3/4・上限250万円)。年度・自治体で異なるため、管轄の保育課に最新の制度をご確認ください。見積書・仕様書は当店が用意します。

工事なしでどこまでできますか?

自立パネルを対面の壁に置く、粘着付きパネルを壁上部に貼る、の2段階まで工事なしで可能です。天井全面の施工は内装業者の領域です。

請求書払い・複数園の一括見積はできますか?

法人・施設向けに請求書払いと複数拠点の一括見積に対応しています。法人導入ガイドからご相談ください。

保育室の広さと写真をお送りください。枚数・位置図・見積書・仕様書をセットでご提案します。
法人・施設は請求書払い・一括見積に対応

法人・施設導入ガイド お問い合わせ(件名「保育園 吸音」)

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