「吸音材を自作して安く済ませたい」「賃貸だから壁に貼らずに、立て掛けるパネルを作りたい」「ダンボールや卵パックで代用できる?」——吸音材のDIYは検索の多いテーマですが、効く自作と効かない自作の差がはっきりある分野です。
結論から言うと、自作で効くのは「枠や板を自作して、市販の吸音材を貼る」方式です。吸音材そのもの(音を熱に変える多孔質素材)を家庭で作ることはできません。この記事では、防音・音響の専門店 Bo-On Room が、有孔ボードやプラダンで作る「立て掛け吸音パネル」の手順と費用、効かない自作の理由を解説します。
前提を1行:吸音材は部屋の中の反響を減らすもので、隣室への音漏れはほとんど減りません。→ 吸音と遮音の違い
先に知っておく——「効く自作」と「効かない自作」
| 自作の方法 | 効果 | 理由 |
|---|---|---|
| 板・枠を自作し、市販の吸音材を貼る(本記事の方式) | ◎ | 吸音は素材性能で決まる。設置の形だけ自作すればよい |
| グラスウール・ロックウールを布で包んで枠に入れる(本格DIY) | ◎ | スタジオの定番。ただし繊維の飛散対策と手間が大きい |
| ダンボールを壁に貼る | × | 密度が低く、音のエネルギーを熱に変える構造がない |
| 卵パックを並べる | × | 見た目がスタジオ風なだけ。吸音も遮音もほぼゼロ |
| 毛布・カーテンを吊るす | △ | 高音の反射は少し減るが、声の帯域には厚みが不足 |
| ウレタンマットレスを立て掛ける | △ | 一時しのぎには使えるが、見た目・衛生・面積の問題 |
基本形:有孔ボード×吸音パネルの「立て掛け式」(工具不要・30分)
材料(1面ぶん・目安)
| 材料 | 数量 | 費用目安 | 入手先 |
|---|---|---|---|
| 有孔ボード(910×600mm前後)またはプラダン(910×910mm) | 1枚 | ¥500〜1,500 | ホームセンター |
| 粘着付き吸音パネル 静科E-15(300×600×15mm) | 4枚 | ¥14,800 | 当店 |
| 滑り止め(イスの脚用フェルト等) | 少量 | ¥100〜300 | 100均 |
合計¥16,000前後。E-15は裏面粘着付きなので、テープも接着剤も不要です。
手順(4ステップ)
- ボードを拭く:ホコリがあると粘着が効かない。乾拭きでOK。
- E-15の剥離紙を剥がし、ボードに4枚並べて圧着:300×600mmを2×2で並べると600×1200mm。角から空気を抜くように押す。
- 下端に滑り止めを貼る。
- 音源の正面(モニター裏・ピアノ背面など)の壁に立て掛ける。倒れやすい場所は壁との角度を浅くするか、突っ張り柱に固定。
これで「壁に貼ったのと同じ効果・跡はゼロ・引越しにも持って行ける」パネルが完成します。倒れ対策が必要な小さいお子さん・ペットのいる家は、突っ張り柱(2×4材用アジャスター)に固定してください。
応用
- デスク用ついたて:600×900mmのボードにE-15を2〜3枚。Web会議の背面ついたてに。
- ピアノの背面パネル:910×1200mm級のボードに38mm厚のE-38を4枚。アップライトの裏に立てる。→ ピアノが響きすぎる部屋の吸音
- 折りたたみ式:ボード2枚を蝶番でつなぐと、自立して収納もできる屏風型に。
- 吊り下げ:有孔ボードならフックで穴に掛けられるので、ピクチャーレールからの吊り下げも可能。
本格DIY:グラスウールの布巻きパネル(中級者向け)
録音スタジオの定番は「木枠+グラスウール(またはロックウール)+布巻き」です。密度32〜64kg/m³のグラスウールボードを木枠に入れ、通気性のある布で包みます。吸音性能は高い一方で、①繊維が飛散するため手袋・マスク・完全な布巻きが必須 ②木枠の工作が必要 ③重くなるので固定が大変という手間があります。工作が好きな方以外は、完成品パネルか上の立て掛け式をおすすめします。
費用比較——自作 vs 市販
| 方法 | 1㎡あたり費用 | 手間 | 賃貸適性 |
|---|---|---|---|
| ダンボール・卵パック | ほぼ0円 | 小 | —(効果なし) |
| 100均ウレタンを直貼り | ¥1,200〜3,600 | 小 | △(剥がれ・跡) |
| 立て掛け式(ボード+E-15 4枚) | 約¥22,000 | 小(30分) | ◎(跡ゼロ) |
| グラスウール布巻きDIY | ¥5,000〜10,000 | 大 | △(重い) |
| 市販の自立大型パネル(SDM-900) | ¥55,000/0.81㎡ | なし | ◎ |
「安く・手間なく・跡なく」のバランスで、立て掛け式が最も現実的です。必要な面数は部屋と用途で変わるので、必要枚数シミュレーターで目安を出してから材料を買ってください。
自作でやりがちな失敗
- 接着剤でボードに貼って剥がせなくなる:粘着付きパネルなら不要。将来貼り替えたいなら面ファスナーで。
- 薄い材を何層も重ねる:層間に隙間ができて効果が安定しない。最初から厚い材(15mm・38mm)を。
- 部屋中に分散して立てる:音源の正面・一次反射点に集中させるほうが効く。→ 貼る位置の優先順位
- 「音漏れ対策」のつもりで作る:吸音パネルでは音漏れは減らない。目的の切り分けを先に。
よくある質問
ダンボールで吸音材の代わりになりますか?
なりません。ダンボールには音を熱に変える多孔質構造がなく、密度も低いため、吸音・遮音ともほぼ効果がありません。
卵パックはスタジオでも使われていると聞きました。
見た目が波型ウレタンに似ているだけで、吸音効果はほぼありません。プロのスタジオで卵パックが使われることはありません。
一番安く効果を出す自作は?
ホームセンターの有孔ボードかプラダン(¥500〜1,500)に、粘着付き吸音パネル4枚を貼る立て掛け式です。工具不要・30分・壁に跡が残りません。
グラスウールは体に悪くないですか?
施工時の繊維飛散対策(手袋・マスク・布巻き)が必要です。完成後も布で完全に包んで使ってください。手間を避けたい場合は発泡ポリエチレン系のパネルが扱いやすいです。
自作パネルはどこに置けば効きますか?
音源(自分・マイク・楽器)の正面の壁が最優先、次に左右の一次反射点です。
賃貸で倒れるのが心配です。
壁との角度を浅くして重心を壁側に寄せる、下端に滑り止め、必要なら突っ張り柱に固定してください。通路・寝床のそばは避けます。

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